たった一人のバイオ・ハザード

実家の近所のフォルクスというステーキハウスの前に、ドブ川が流れています。
初夏の季節になると、どういうわけかそこには大量のザリガニが発生します。
普通の「大量」ではききません。恐らく、今皆さんが想像した「大量」の五倍はいると考えていただいて良いでしょう。普段は灰色のドブ川が、初夏には赤く染まるのです。
そこに一組の親子。そのドブ川を眺めながら。
父「今年も凄いな」
子「凄いね」
父「・・・」
子「・・・(父よ、そんなにザリガニの群れを眺めて何を思うのです?)」
父「なあ。これを、いくつかつかまえて・・・」
子「つかまえて?」
父「田舎(長野の父の実家)に持って行こうと思う。」
子「・・・ぅ、うん」
父「そいで、田舎の家の前の川に放すんだ。」
子「何のために?」
父「こいつらは瞬く間に殖え、数年で川えびやドジョウやタニシはいなくなるだろう。俺があの川の生態系を変えるんだ。」
子「・・・ぅん」
これはうちの父と弟の、ある休日のやり取りだそうです。
定年を五年後に控えてなお野望でいっぱい、ちょっぴりバイオ・ハザードなうちの父親です。
父よ、いくつになっても野望を忘れないのは大事なことですが、今回の野望はたぶん罰が当たるのでやめた方が賢明です。